津山市『先人のあゆみ』に朝日茂が登場
岡山県津山市人権尊重の教育推進協議会がこのほど発刊した『つやま・先人のあゆみ――あしたへつなぐ』(A4判140頁)に、人間裁判の朝日茂さんが登場した。
同書は、①苦心と連帯で困難を克服した地域開発、②生きる権利を回復しようとしたたたかい、③戦争の過ちに気づき平和を求めた活動の3分野・24主題をとりあげている。そのうち第2章で、「高倉の元禄百姓一揆」「久米南条・北条郡17か村の江戸越訴」「津山藩政をゆるがした改政一揆」「美作水平社の創立」「部落解放に生涯をささげた岡映」など13主題を取り上げ、その最後を「朝日茂の『人間裁判』」で締めくくっている。
朝日茂編には、郷土史家・頭士倫典氏の書、津山商業学校、朝日新聞社提供の3枚、事務局の玉木陽一氏が自ら取材した本行寺の墓石など14枚の貴重な写真が挿入され、「茂の訴えは、国民の生きる権利『生存権』を確立し、国家はその義務を負うことを明確にした画期的な訴訟でした。その後、人々は『朝日訴訟』を『人間裁判』とよぶようになりました」とする葛原智編集委員の文で締めくくっている。
本書を通読すると、津山に生きた先人の努力とその結実としての風土があってこそ朝日訴訟は起こせたのだと感じさせる。それがまた今日も生きていると思わせるのは、津山市福祉事務所による処分から始まった事件を、それが国の機関委任事務として行われたとはいえ、処分当事者である津山市の出版物に取り上げた、編集委員の唯物史観的見識の高さである。
頒価500円で一般販売されている。申込先は、〒708-8520津山市新魚町17番地アルネ津山5階津山市総務部人権啓発課(電話0868-31-0088)