一審勝訴に貢献した労研の『労働の科学』が朝日訴訟を特集
朝日訴訟の一審勝訴に立証面から大きな貢献をした労働科学研究所が、その月刊誌『労働の科学』2007年11月号で「健康格差の解消へ」を特集。新井章弁護士(朝日訴訟の主任弁護士)の論文と私(朝日健二)の拙文を掲載しています。その前文の一部と編集雑記を紹介します。
前文「特集の読みどころ」
…特集4は,憲法25条の生存権と生活保護法の内容について争った「朝日訴訟」(1957年)の概要とその後の社会保障政策にもたらした影響について述べます。当時と現在は社会保障予算が削減され続けているという共通点があると見て,同訴訟の今日的意義を考察します。
特集5では、近年社会保障政策の切り崩しがすすみ、深刻な格差問題が生じており、これは憲法25条の規範に反すると指摘。一方で、同25条は条文が具体性を欠くために、社会保障の施策が時の政治に左右されるといった欠点があると捉え、改正も視野に入れることを提案しています。
「編集雑記」
憲法25条の生存権について争った朝日訴訟の提訴(1957年)から今年で50年となります。今月号では原告の朝日茂氏の養子となり訴訟を継承された朝日健二氏,弁護団の新井章弁護士が執筆しています。
この裁判では,労働科学研究所の藤本武博士の最低生活費の研究が証言として使われました。藤本博士は2002年に90歳でお亡くなりになり,その膨大な蔵書は現在「藤本文庫」として当研究所の図書館に所蔵されています。その数は整理済みのものだけでも8,000冊を超えており,分野も経済学を中心とした社会科学にとどまらず多岐にわたっています。驚くことに,ほとんど全部に目を通しておられ,書き込みも多く残っています。論文執筆や調査にも精力的に取り組みながら,時間をどうやりくりしていたのだろう――と思いを馳せています。
労働科学研究所出版部
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財団法人労働科学研究所は、岡山県が生んだ篤志家・大原孫三郎(倉敷紡績二代目社長)が、過酷な労働が常態化していた工場の労働環境改善を目指して設立したもので、現在は川崎市宮前区菅生2丁目8番地にあります。
朝日訴訟における藤本武博士の証言は、裁判官に大きなインパクトを与えたと考えられ、その基礎になった「最低生活費の研究」は、厚生省から委託されて行われた研究報告であり、1961年の保護基準算定方法の改革の論拠となったものであって、これは今日の生活保護基準を論ずるうえでも大いに参考にされる価値をもっていると考えられます。
岡山から提訴された朝日訴訟が、岡山県人が興した研究所の研究結果によって勝訴に導かれたという劇的な歴史的事実に感動し、労働科学研究所への熱い思いを込めて書かせていただきました。
朝日健二より | 2007年12月13日 18:56