NPO(特定非営利活動法人) 朝日訴訟の会


朝日訴訟の会とは


生存権裁判東京地裁判決に対し原告側が宣言

生存権裁判東京地裁判決に対し、原告団、弁護団、生存権裁判を支える東京連絡会の3者が共同で次の宣言(全文)を発表しました。
東京生存権裁判の判決について
2008(平成20)年6月26日
    東京生存権裁判原告団
    東京生存権裁判弁護団
    生存権裁判を支える東京連絡会
 本日、都内在住の70歳以上の生活保護受給者12名が、それぞれ居住する自治体(特別区、市)を被告として、2006(平成18)年3月ないし4月になされた、老齢加算の廃止を内容とする保護変更決定処分の取り消しを求めた裁判(東京生存権裁判)について、東京地方裁判所民事第2部は、原告らの請求を棄却する判決を言い渡した。
 老齢加算及び母子加算の廃止をめぐっては、全国10地裁において115名の原告により裁判が闘われているが、本判決は全国で最初に言い渡された判決である。
 老齢加算制度とは、高齢者に特有の生活需要を満たすために、原則70歳以上の生活保護受給者について、一定額の保護費を加算支給する制度であり、1960(昭和35)年の創設以来、40年以上にわたり維持されてきたものである。
 ところが、2003(平成15)年、小泉内閣は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)」を閣議決定し、社会保障費の抑制を「財政上の最大の問題」と位置付けた上で、老齢加算の「見直し」の方針を示した。
 これを受けて厚生労働省は、老齢加算制度の廃止を決定し、2004(平成16)年度から老齢加算を段階的に削減し、2006(平成18)年度からはこれを全廃した。
 このように、老齢加算制度の廃止は、財政問題の「解決」のための社会保障費抑制策の一環として行われたものであり、高齢者にとっての「健康で文化的な最低限度の生活」についての実質的な検証をおろそかにしたまま強行されたものである。
 もともとギリギリの生活を送っていた高齢保護受給者は、老齢加算の廃止により約20%もの生活扶助費が削減され、「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る生活を強いられている。
 このような措置は、生活保護法56条が定める不利益変更禁止の原則に反するとともに、生存権を保障する憲法25条及びこれを具体化した生活保護法の基本原理に反する違憲、違法な措置である。
 政府は、この老齢加算廃止を手始めとして、ひとり親等世帯に支給されていた母子加算についても今年度末をもって全廃し、さらには生活扶助基準本体についての切り下げを行おうとしている。
生活扶助基準本体の切り下げについては世論の大きな反対を受け、与党内からも批判を浴び、先送りを決めざるを得なかったものの、その方針を放棄してはいない。
 今、格差と貧困が広がる中、最後のセーフティーネットとして生活保護制度が果たす役割の重要性については論を俟たないが、改正最低賃金法には「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」と明記されるなど、生活保護制度は他の諸制度、諸施策と連動しており、生活保護基準の切り下げは、生活保護受給者のみならず国民生活全般に影響を及ぼす。
 本件訴訟は、政府の生活保護基準切り下げ政策の転換を図り、国民の生存権を保障する上で、重要な意義を有するものである。
 本日言い渡された本判決は、
第1に、生活保護基準以下の生活を強いられている国民(とりわけ高齢者)が存在する事実に対して、この貧困を解決するのではなく、この貧困状態に合わせて生活保護基準を切り下げ、格差と貧困を拡大する政府の不当な政策を是認したものであり、
第2に、老齢加算が果たしてきた重要な役割を何ら理解することなく、老齢加算が廃止されることで高齢保護受給者の生存権を侵害している実態から目を背け、行政の達意・違法な措置を追認した不当なものである。
 人権の最後の砦となるべき司法が、このような判決を下すことは、その職責を放棄したものといわざるを得ず、深い悲しみと憤りを禁じ得ない。
 我々原告団及び弁護団は、直ちに控訴を準備し、今後も引き続き、他地裁で闘う原告団・弁護団とともに、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るために全力で闘うことをここに宣言する。
 最後に、この訴訟に対し、署名・傍聴活動等による絶大なご支援をいただいた支援者ならび他地裁の原告団・弁護団の方々、そして取材、報道に取り組まれたマスコミ各位に対し、心よりお礼を申し上げるとともに、今後もますますのご支援とご協力をお願いするものである。

朝日健二
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