NPO(特定非営利活動法人) 朝日訴訟の会


朝日訴訟の会とは


歴史に背を向けた東京高裁・青柳判決

「平成の人間裁判」といわれる生存権裁判に対する全国初の高裁判決が5月27日、東京高裁(青柳馨裁判長)から下されたが、80歳前後の12人の原告の訴えを退ける冷たい判決であった。
 青柳判決は朝日訴訟最高裁判決(1967年5月24日)の不当な傍論をそっくりそのまま引用して、「保護基準の設定は厚生労働大臣の合目的的な裁量にゆだねられ」ており、「70歳以上の者が老齢加算の廃止後、一層の節約を強いられ、日常生活で不自由を感じる場面が少なくないことは否定できないにせよ、『健康で文化的な最低限度の生活』を下回ると直ちに断定することはできない」とした。
  原告側は、「生活保護を利用しながらもささやかな楽しみを持ち、社会との繋がりを保つといった人間らしい生活を取り戻すため、それぞれ人間の尊厳をかけて戦ってきた」とし、青柳判決は、「憲法によって与えられた司法の責務をも放棄するものであって、極めて不当な判決といわざるを得ない」とする声明を発表した。
  朝日訴訟一審勝訴からすでに半世紀を経て、生存権に対する国民の意識は格段に高まり、保護基準自体も朝日訴訟一審判決の翌年から23年間にわたって格差是正が行われ、前政権の保護基準引き下げの誤りについても母子世帯については新政権がただちに是正せざるを得なかった。しかるに青柳判決に現れた生存権に対する考え方は、およそ半世紀前の朝日訴訟最高裁判決からいささかも前進を見ないどころか、むしろ政治的歴史的な進歩に目をつぶり、逆に半世紀前に後退させるという、司法に期待される憲法感覚、人権感覚の一片のかけらも感じられない、極めてお粗末、不当な判決であるとの指摘はまぬがれない。原告側は、上告して争う旨、声明している。

朝日健二
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